― 勇気ある撤退 2026年7月19日~21日 ―
昨年は悪天候のため実施できなかった八ヶ岳・大同心雲稜登攀を、2026年7月19日から21日の日程で実施した。今回の山行に向けては、YouTubeや実際に登攀したクライマーから得た情報をもとにトポ図を作成し、核心部のムーブや支点構築、ピッチごとのロープワークまで綿密に計画した。さらに伊木山では実際の登攀を想定した反復練習を行い、7月12日には御在所岳・前尾根を登攀して体力や判断力、マルチピッチでの連携を確認した。
こうした準備を積み重ねることで、メンバー全員が「今回は必ず実施できる」という確かな手応えを感じて本番を迎えた。
7月19日 赤岳鉱泉へ
甲信越地方はまだ梅雨明け前で、数日前から天気予報は時間ごとに変化し、本当に入山できるのか最後まで気が抜けなかった。
しかし、当日は私たちの願いが届いたかのように天候は安定し、薄曇りの絶好のコンディションとなった。強い日差しもなく、赤岳鉱泉まで快適な登山となった。
一年ぶりに背負う約20kgのテント装備は予想以上に重く、身体が慣れるまでは足取りも重かった。それでも周囲を見渡すと、小屋泊まりや日帰り登山者がほとんどで、大型ザックを背負う私たちはひときわ目立つ存在だった。
印象的だったのは、ヘルメットを携行している一般登山者が以前よりも増えていたことだ。登山における安全意識の高まりを感じ、嬉しく思った。
談笑しながら歩くこと約2時間。重いザックにもようやく身体が慣れた頃、赤岳鉱泉に到着した。ザックを降ろした瞬間、身体が宙に浮くような軽さを感じ、思わず笑みがこぼれた。
幕営地を確保してテントを設営する。この日は連休中ということもあり多くのテントが張られていたが、撤収するパーティーも多く、結果的に平坦で条件の良い場所を確保することができた。
幸先の良い出来事
初日の夕食は翌日の登攀に備え、小屋の食事を予約していた。
赤岳鉱泉名物といえば豚ステーキ。しかし繁忙期はハンバーグになると聞いていたため、今年もそうだろうと思っていた。
ところが夕方、食堂前で小屋のスタッフが夕食メニューを書き換え始めた。
「ハンバーグ」から「豚ステーキ」へ。
思わず理由を尋ねると、
「食材が確保できたので変更しました。」
とのこと。
思いがけない幸運に、メンバー全員が大喜びだった。
「これは明日の大同心もうまくいくぞ。」
そんな期待も込めながら、誰よりも早く食堂へ向かった。
熱々の鉄板に火が入り、ジュウジュウと音を立てる豚ステーキを囲む。
昨年味わえなかった名物料理をいただけたことに感謝しながら、全員が完食した。
決戦前夜
夕食後はテントに集まり、翌日のミーティングを行った。
行動予定、装備確認、各ピッチの役割分担、ルート確認、注意事項……。
一つ一つを丁寧に確認し終えると、それぞれのテントへ戻り午後7時には就寝した。
しかし、翌日に控えた大同心雲稜への期待と緊張が入り交じり、なかなか眠ることができない。
夜中にも何度か目を覚まし、「まるで年寄りだな。」と自分で苦笑した。
それでも、翌朝には不思議なほど身体は軽かった。
その2へ続く