八ヶ岳 横岳大同心雲稜2026/7/19-21 その2

天候:晴れ  参加者:5名

7月20日 いよいよ大同心雲稜へ
 十分な睡眠とは言えなかったが、不思議と身体は軽かった。朝食を手早く済ませ、予定どおり午前5時前に赤岳鉱泉を出発した。
薄明るくなった樹林帯を歩き、大同心基部へは午前7時前に到着した。ほぼ予定どおりである。先行パーティーも後続パーティーもなく、落ち着いて登攀準備を進めることができた。
昨年は悪天候のため基部までしか来られなかったが、その時と変わらず、大同心の岩壁は覆いかぶさるような威圧感を放っていた。それでも一年間積み重ねてきた準備のおかげで、不思議と恐怖よりも「いよいよ始まる」という期待の方が大きかった。
装備を整え、午前7時20分頃、H・Eペアが先行してクライムオン。
1ピッチ目
大同心雲稜の中でも難しいとされる1ピッチ目である。
出だしのクラックに#0.5のカムをセットして最初のプロテクションを確保。途中、やや心許ないハーケンも利用しながら慎重に高度を上げる。
核心部は岩が立っており、一瞬身体を乗り込ませる動きに力を要した。しかし、この一年間、伊木山や御在所前尾根で繰り返し練習してきた成果は大きく、落ち着いてムーブを組み立てることができた。
難なく終了点に到着したものの、支点を確認すると、設置されていたボルトの一本が抜け落ちていた。幸い約50cm上部に健全なハーケンがあり、安全な支点を構築することができた。後日、この情報は赤岳鉱泉へ報告した。
支点を構築し、セカンドのEさんへコール。幸い声は十分届いた。
Eさんは着実に高度を上げてきたが、核心部ではしばらく足が止まった。それでも一手一手を確実にこなし、無事に終了点へ到着した。
「いやあ、大変でした。」
その一言に、このピッチの難しさが凝縮されていた。
続くMさんは、さすが経験者である。核心部も迷うことなく一撃で突破し、安定した登攀を見せてくれた。
2ピッチ目
Mさんの到着を確認し、続いて2ピッチ目へ。
出だしはやや被っており、身体を離陸させるまで少し神経を使う。しかし問題なく抜け、核心となる凹角へ到達した。
ここは傾斜も強く、使えるホールドも限られる。体感では5.9から5.10程度に感じる厳しい区間だった。
この日は新人のEさんがビレイを担当していたこともあり、無理は禁物と判断し、ここだけはA0を選択した。
アルパインでは「登ること」より「安全に登ること」が重要である。
その後も気持ちの良いフェースを登り、予定どおり終了点へ到着した。
Eさんも無事に続き、二人で景色を眺めながらMさんを待つ。
ここまで登ると高度感は一気に増し、眼下には赤岳鉱泉や硫黄岳方面の景色が広がる。しばし緊張を忘れ、記念写真を撮りながら水分と行動食を補給した。
Mさんの到着が少し遅れたが、後で聞くとコールが自分たちへの合図か判断できず、出発をためらっていたとのことだった。
マルチピッチでは、こうした意思疎通の難しさも改めて感じさせられた。
3〜5ピッチ
3ピッチ目は草付き主体のピッチである。
最初に#2カムでプロテクションを取り、点在するハーケンを利用しながら慎重に登る。
事前情報どおり、一部には浮き石もあったが、ホールドは予想以上にしっかりしており、冷静に登れば危険を感じることはなかった。
Mさんが後続することを考え、このピッチではプロテクションを多く残置した。
4ピッチ目、そして5ピッチ目のトラバースも落ち着いて通過し、予定どおり最終ピッチ基部へ到着した。
時計を見ると午前11時30分頃。
ここまで来られたことに、大きな達成感があった。
しかし同時に、全員の疲労も少しずつ見え始めていた。
(続く)